今般、以前より何度か当掲示板で紹介した「謎の小型無線装置」を構成する受信機RKS-253を「ヤフオク!」にて入手した。 この小型受信機は同一サイズの小型送信機SMT-1及び交流式電源により無線装置を構成するが、その用途は不明である。本無線装置は「U.S. Clandestine Radio Equipment」でスパイ用無線機として紹介され、米国ではその分類での扱いとなっている。 小型送信機SMT-1と受信機RKS-253は1950年代の中頃に放出された余剰品で、米軍ジャンクを扱う山七商店やトヨムラによりアマチュア無線用として販売された。 本来送信機は電信専用で、構成は水晶発振が三極管6J5、電力増幅がビーム管6L6であった。しかし、一部の送信機は6J5を双三極管6SN7に変更し、1/2で水晶発振を、1/2で変調回路を構成する構造に改造され、6L6の第2格子変調方式のAM送信機として販売された。 さて、肝心の入手受信機であるが、程度はすこぶる良好であったが、構成真空管が未装備であった。受信周波数は3-7MHzと標記されているが、実際の対応周波数は2-8MHz程度である。 受信機本体に特段の欠品は無く、真空管を装着し、線條電圧1.5V、高圧電圧90Vを加圧すると軽快に動作した。しかし、BFO回路が不動作の様であった。 本来この受信機は送信機と同様に電信専用で、BFO回路は常時動作する構成である。調べるとBFOの発振周波数が大きく変更され、受信時にBFOが掛からないように設定されていた。 この受信機が販売された1950年代はAM変調が全盛の時代であり、購買者はBFOを不動作の状態に設定し、使用したと考えられる。 BFOコイルの調整で機能は回復し、7MHz帯のSSBが復調できるようになった。しかし、バーニャダイアルの外、微同調機構は具えていないため、その同調操作は至難である。 ところで、「謎の小型無線装置」を構成するRKS-253やSMT-1には何度か出会い、先般入手した未充足のSMT-1と併せ、当館(横浜旧軍無線通信資料館)は本装置の送信機及び受信機を所蔵する事になった。しかし、不思議な事に、今までに一度として本無線装置を構成する交流式電源を見かけた事が無い。 1950年代の中頃、RKS-253とSMT-1は余剰品として大量に放出されたが、多分この折、電源装置は別ルートにより処分され、解体されたものと推察される。謎の小型無線装置補足 本装置は小型送信機SMT-1、受信機RKS-253及び交流式電源により構成されている。送信機、受信機は小型のハンドル付鉄製ケースに収められ、容積は共に210x135x165mmと非常に小型である。 構造から元来は軍仕様と考えられ、内部にはMFP塗装が施されている。使用部品や製造方法から、日本製で有る事に間違いはないが、添付の回路図に書かれた添え書きは英語である。 送信機SMT-1は水晶発振(三極管6J5)、電力増幅(ビーム管6L6)方式の電信専用機で、運用周波数が3〜7MHz(A型)、7〜15MHz(B型)の二機種が製造された。 受信機RKS-235はMT型電池管を使用したスーパーヘテロダイン方式で、構成は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段、BF0機能付である。運用周波数は送信周波数に対応していたと考えられ、こちらも3〜7MHz(A型)、7〜15MH(B型)の二機種が製造された。 送受信機は交流式電源で運用するが、入力一次電源は交流100〜200Vで、高圧、低圧の整流はセレン構成である。